
俺が東京の私大に通ってた時、同じ大学の同級生にAという友達がいた。
Aは俺と違う地方から上京して来たんだけど、同じ寮に入ったから仲良くなった。
Aは貧乏暮らしをしていて、バイトもしてたとはいえ月給は少なく、細々と暮らしてた。
まあ、金に困ってる友達は山ほど見てるから、Aに関しても普通のことだと思ってた。
でもある日、Aは青ざめた顔で俺に話しかけてきた。
「どうした?」と聞くと、どうやらパチンコお金を使いすぎてどうしても返せない借金が残ってしまったらしい。
貧乏ながらも自由に使えるお金の範囲内でパチンコに興じていたらしいが、誘惑に負けてお金を使いこみ、しまいにはカードローンにも手を出してしまったそうだ。
さすがに俺もあきれたんだけど、入学以来の親友だし、あまりにもかわいそうだという思いが強かったから、多くもない貯金からお金を貸してやることにした。
Aは涙目になりながら喜んでいて、感謝の言葉を何度も告げ、後日、借金を返すことが出来たという連絡をもらった。
俺も大学生でお金が自由に扱える身分じゃなかったけど、何とか一人の友達を助けられたことでとても誇らしくなってた。
返す期限は特に設けず、またお金の余裕が出来たら返してほしいと伝え、俺は普通通りに生活してた。
そして3ヶ月も経つと俺は金を貸したことも記憶の片隅に追いやってた。
そんなある時、大学の授業が終わった後、ふと俺の別の友達が言った。
「Aが最近学校に来てないんだって」。
当時、俺とAは違う講義を受けていて、バイトや趣味に気を回してたので全く会っていなかった。
Aと一緒の講義に出ていた友達は、すぐに心配して電話をしても繋がらなかったらしい。
俺はその日にAの自宅に訪ねたんだけど、インターホンを鳴らしても出て来なかった。
確かに家に居る雰囲気じゃないとはいえ、何だか不審な感じがした。
大学の先生、職員や友達が連絡しても、誰もその行方は知れずだった。
大学の先生によると実家にも帰っておらず、家の人も全く連絡が取れてないらしい。
結局Aを心配して数日を過ごしていたが、ずっと音沙汰無しだった。
1ヶ月ほどが過ぎたある日、私は友達の一人から突然電話である事を伝えられた。
それは、Aを発見したが、Aはすぐに逃げ出して消えてしまったと言う。
俺はただ事では無いと思い、他の友達とAを見つけることにした。
マジで必死でさ。俺は週末に何とか探し回った。日も暮れるギリギリまで。
「もうダメかな」そう思った時だった。
オレも正直びっくりしたんだけど、Aの後ろ姿を見つけることができた。
俺はAを逃がさないように近寄り、立ちふさがった。
Aはびっくりしたものの、なぜか逃げる素振りも見せず見つめて来た。
そして、俺に心の内を明かしてくれた。
Aが言うには、本当はもっと借金をしていてどうしようも無くなり、次第に大学に行くのが怖くなったらしい。
私は後で、Aが相当な心の病に陥っていたことを知った。
もはや貸したお金のことは思考の外となってたが、俺はAの両親からお金をしっかり返してもらった。
地方から一人で出てきて、大都会で不安も大きく、そしてお金の不安が引き金となって心を病んでしまったようだった。
カード関係は大学生でも気軽にお金を借りられると言うけど、同時にギャンブルなども解禁となる年頃でハメを外してしまいがちになる。
心に不安が強く、拠り所の無い人はこういったギャンブル借金地獄になりやすいらしい。
元々持っているお金が少ない故に、お金が無くなるという恐怖が薄かっことのがギャンブルで失敗した原因だと思う。
大学生でも気軽に出来るギャンブルで躓かないように、しっかりと「自分の生活を考えて制御したいものだ」とこの友達Aをまざまざと見て思い知らされた。
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