
30歳妻と子供一人の私。
一軒家も購入し、仕事も軌道に乗ってきて子供も二人目も考えている。
周りからみたら幸せな生活を送っているようにみえるかもしれない。
お小遣いは月に3万円。平均よりも少し少ないかもしれない。
そんな私は友人に合計100万円ものお金を貸している。
ただそのお金は返ってくる見込みはない。
そのお金は高校生の時に予備校に通っていた友人に貸しているお金だ。
高校3年の時に予備校で知り合った私とは別の高校に通っていたA君。
とても気の合う奴で、よく自習室を抜け出して缶コーヒーを片手にさぼっていた。
私は何とか現役で私立の大学に合格したが、A君は留年が決定。
それから1年間は連絡を取ることはなかった。
A君から連絡があったのは翌年の受験シーズンの後。
見事1浪したが志望校に合格したA君から久しぶりに連絡があった。
まだ未成年だった私たちは居酒屋に行き、ジュースで乾杯。
1年前の楽しかった予備校生活の思い出や、この1年間のことを話していた。
A君は私が大学に受かり正直焦ったとのこと。
同じようにさぼっていたはずの私が志望校に受かったので悔しかったと言っていた。
でもそれを励みに1年間猛勉強して志望校に合格したようだ。
頭の良かったA君は理系で、計算がとても速かった。
その特技を生かして大学生活はスロットで生活していくというのだ。
私はコツコツ時給900円の居酒屋でバイトをしていて月に10万円は稼いでいた。
何でも挑戦してみる好奇心旺盛の私はスロットも経験したことがあった。
もちろん勝つことも負けることもあったが、どっぷりははまっていなかった。
それからは大学は違うもののA君とは週に1度はご飯を食べに行ったり買い物に行ったり仲良く過ごしていた。
そしてそんなA君からスロットの誘いがあった。
元々スロットをやったことのある私は何の抵抗もなくついていった。
私ははまりすぎないように財布の中身を1万円だけにして行った。
A君は毎日のように行っているのか財布の中身は10万円を超えていた。
打ち始めて私に当たりがあり、メダルがどんどん出てきた。
A君は当たるものの続かずに、結局3万円ほど負けていた。
5万円ほど勝った私が「焼肉を食べに行こう」と誘った。
もちろんその日に勝った私のおごり。
A君は負けたことが非常に悔しかったらしく、その日に負けた原因を分析していた。
A君はその日の分析だけでなく、台の癖や設定の読み方まで私に色々教えてくれた。
研究している内容はほぼプロのスロッターのような状態だった。
もちろん負けることはあるが、月に平均して30万円は勝っているとのこと。
私にも「居酒屋のバイトを辞めて一緒にスロットで飯食っていこう」と誘ってきたが、コツコツ頑張ることの好きな私は断った。
趣味程度なら楽しめるが、目の色を変えて必死にスロットを打ってお金を稼ぐのは私には合っていないと思ったからだ。
それから週に1度はA君とスロットに行くことになり、勝った方がご飯を奢った。
二人とも負けた時は牛丼屋で並盛を食べて解散した。
そんなある時、いつもと同じように朝からスロット屋に並んでいた時に、A君が「3万貸してほしい」といってきた。
どうやら負け越しているらしく、手持ちの金がないとのこと。
大勝しているA君も見たことがあったので、すぐに返してくれると思い、3万を貸してあげた。
この3万が始まりだった。この日は二人とも勝ったが、明日以降の軍資金が必要とのことで3万はその日に返してくれなかった。
それから翌週も同じように「2万貸してほしい」と言われてまた貸した。
次の月にまとめて半分は返してもらったが、その時にA君に貸していたお金の合計金額は20万ほどになっていた。
貸してほしいと言われ、A君とはもう何年もの付き合いなので貸さないわけにもいかず、ついつい貸してしまったのだ。
そして大学を卒業する頃にはA君に貸した合計金額が100万円を超していた。
こつこつためたバイト代のほとんどをA君に貸してしまったのだ。
A君も大学を卒業して就職はしたものの相変わらずスロットにはまっていて、今では毎月1万円ずつを返してもらっている。
このペースでは何年かかるかわからないが、妻にも相談できずにいるのが現状だ。
金の切れ目が縁の切れ目というが、僕とA君はまだ切れていない。
私の中では貸したお金が全て返ってきた時にA君との縁を切るつもりだ。
1万円ずつ返してもらうようになったのもかなり困難な交渉を経てやっとこぎつけた。
初めは「大勝したと時にまとめて返す」と言っていたが正直あてにはならない。
「このまま返してくれないなら、親にも会社にもスロットで僕に借金していることを言うぞ」と脅しをかけようやく書面にサインさせて毎月返させている。
私はもともと博打にはまるタイプではないが本当に博打は怖いと思った。
A君はこんな状況でも今でもスロットを続けている。
本当に人のことを信じることができないような経験をした。
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